鹿教組柚木園文化部長から
第57次全国教研に参加した29名が、東京のホテルの全員到着した。夜8時前で、気温も低く、あいにくの天候の中、思い荷物を抱えた参加者に「明日の全体集会は中止となりました」と伝えたあの日のことは、決して忘れられない。初参加者の人も含め、すべての参加者が、東京での全国教研を楽しみにし、何より全体会での感動を共有できるものと期待を寄せていただけに、怒りと同時に悔しさをにじませていた。
今回の判決の中で、ホテル側の違法行為を指摘したことはまったく当然のことである。わたしが最も評価したい裁判所の判断は、教研集会への参加者について「相互の意見を交流させ、自己の思想や人格を形成、発展させる場である。」と教研集会の実践交流の重要性を高く評価している点だ。
今、子どもたちは、格差の固定化、拡大、貧困の社会の中で、生きる希望をそがれ、学ぶ意欲を喪失してきている。それだけに、現場の子どもたちのつぶやき、悲鳴、叫び届く教研集会の意義はますます高まっている。今後も自信を持って、教研活動に参加しよう!
日教組の教研集会拒否をめぐり、プリンスホテル側に損害賠償などを命じた東京地裁判決の要旨は次の通りです。
- 施設使用拒否
ホテルは日教組と施設の使用契約を締結したのに、正当な法的根拠なく一方的に施設使用と集会参加者の宿泊を拒否した。裁判所の仮処分命令の決定にも従わず施設の使用拒否を継続しており、債務不履行に該当することは明らかだ。
使用拒否は、民事保全制度の基本構造を無視し、司法制度を無視する容認できない不当な行為であり、違法なことは明白だ。その違法性は著しく、ホテルには不法行為責任がある。
使用拒否で、組合員らの全体集会などへの参加が妨げられた。集会は参加者がさまざまな意見や情報に接することで自己の思想や人格を形成、発展させ、相互に意見や情報を伝達、交流する場となる。参加者は集会への参加について固有の利益を持ち、その利益は法律上保護されるべきだ。ホテルは、渡辺幸弘社長らによる施設使用拒否について、傘下77単組や組合員らに対し、不法行為に基づく損害賠償責任を負う。
- 名誉棄損
ホテルのホームページ(HP)上で約1年2カ月にわたり「日本教職員組合様との会場利用に関するトラブルについて」と題する記事を掲載し続け、記者会見などをした。こうした一連の行為は、日教組の名誉と信用を棄損するものとして不法行為を構成する。
- 取締役らの賠償責任
仮処分命令の決定が出されたホテルは、法律上、日教組に宴会場を使用させる義務を負った。渡辺社長はその事実を知りながら使用拒否に及んだのであり、悪意で取締役としての職務を怠ったと言わざるを得ない。被告の取締役らには、仮処分命令の決定に従うよう求めるなどし、渡辺社長が使用拒否に及ぶことを防ぐ義務があった。会社法に基づき損害賠償の義務を負う。
- 謝罪広告の掲載
日教組が全体集会などの開催を中止せざるを得なくなったことや、ホテルがHP上で日教組の名誉と信用を棄損する記事を掲載していることなどに照らすと、日教組の名誉を回復するのに適当な処分として、新聞朝刊の全国版に謝罪広告の掲載を命じるのが相当だ。約2億9千万円の賠償支払いを含め、ホテル側に対する請求のすべてを認める。
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