核廃絶・平和行政に関する要請
謹啓
貴職におかれましては、平素より日本社会、地域社会の発展のため日夜ご尽力のことと拝察いたします。
一九四五年八月、二発の原子爆弾で、瞬時にして広島・長崎の街は廃墟と化し、三〇数万人もの尊い命が奪われ、今もなお原爆被害者の方々は原爆後遺症に苦しんでいます。また、現在も多くのヒバクシャが国の内外に暮らしていますが、取り巻く環境は厳しく補償も不十分なままです。この六〇年間に、核兵器保有国は実質的に八カ国となり、量と質は限りなく増大してきました。また原子力発電・再処理施設も世界に拡散しています。こうした核の軍事利用、商業利用(平和利用)によって、放射性物質は地球に拡散し、人々に核被害を拡げています。また、この六〇年間に人類の多くは核兵器の危険性について理解を深め、二〇世紀の終わりには、核廃絶への望みは大きく前進するかに見えましたが、米国でブッシュ大統領の登場によって、すべてが水泡に帰そうとしています。二〇〇一年の「九・一一同時多発テロ」以降、米国は強大な軍事力による世界覇権を実現しようとし、アフガニスタンに続いてイラクへ侵攻し、特にイラクでは現在も多くの血が流されています。
日本政府は広島・長崎の悲劇を体験した立場からも積極的に核廃絶、非戦の立場を貫く責務があるにもかかわらず、このようなブッシュ政権に異を唱えず、イラクへの派兵とともに、ミサイル防衛を米国と共同で進めようとしています。日本の軍事同盟の強化は、周辺国に対して大きな影を落としています。また、有事関連「国民保護計画」の策定によって、いつでも戦争ができる準備が進められようとしていますが、「核攻撃の想定」は再び被爆者をつくることであり、断じて容認できません。
私たちは、被爆国日本が世界に先がけて核廃絶への道筋を打ち立てて、「非核法」の制定をはじめ、北東アジアでの非核地帯創設を実現するイニシアティブを発揮していくことが緊急の課題と考えます。また「地方分権」の時代と言われる中で、地域社会の中から核の恐怖を一つひとつ取り除き、核兵器廃絶への道筋をたてていくことも今大きく求められています。さらに原発と核兵器は切り離せない問題です。原発政策を漸次廃止し、太陽光(熱)や風力発電など、クリーンエネルギー政策へと切り替えていくことが肝要です。
いずれにしても被爆国である日本の積極的な働きかけ、地方自治体の果たす役割は益々大きくなってきています。
私たちは、本年も八月の被爆六一周年原水爆禁止世界大会成功へ向け、世界の恒久平和と核廃絶を願い「非核・平和行進」を取り組みます。
つきましては、標記「核廃絶・平和行政に関する要請」につきまして、別紙の通り要請申し上げる次第です。どうか私たちの取り組みをご理解頂き、ご支援、ご協力の程よろしくお願い申しあげます。
敬具
二〇〇六年 五月 二九日
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