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2006年5月16日 速報19号 組織局
広報 教育基本法「政府法案」の衆院本会議各党質疑概要
教発123整理154
各単位組合委員長 様

日本教職員組合中央執行委員長 森 越 康 雄

 各単組の教育基本法「政府法案」反対のとりくみに敬意を表します。
 さて、教育基本法「政府法案」は本日午後の衆議院本会議で趣旨説明の後、各党・会派の質疑が行われた。いわゆる「愛国心規定」について、小泉首相、小坂文部科学大臣はともに用意された答弁書をほぼ同様に棒読みし、「内心に立ち入るものではない」としたが、具体的な歯止めについては答えなかった。また、密室審議と批判されている70回にわたる教基法改正に関する与党内協議の経過の公表について小泉首相は、「政府としては答える立場にない」と明確に否定した。
 なお、引き続き、衆院教育基本法特別委員会でも提案理由説明が行われたが、質疑には入らず、散会。初回の質疑は明日、衆院での党首討論が予定されることから、18日以降と予想される。

衆院本会議の民主党教育基本問題調査会長・鳩山由紀夫議員の質問および答弁の概要は次のとおり。

はじめに
与党内で70回議論したとしつつ中教審会長すら議論の経過を聞いていないという。法案も貧相で、自民党主張の「愛国心」と公明党主張の「宗教教育」バーターはもってのほかで、国民不在に憤りを覚える。
 教基法は憲法の付属法なので、本来なら将来新憲法でうたわれる教育の方針に沿って改正するのが筋。自民の憲法改正案に新たな教育像は見えない。あるべき憲法論議の上で改正案を出しなおすべきではないか。
 時間不足だからと強引に特別委員会設置というのは許されない。憲法調査会のようなもので広く国民世論を聞くことから始めるべきだ。60年ぶりの改正を1ヶ月の会期で成立できると考えるなら国民軽視もはなはだしい。
 民主党は近々、「日本国教育基本法案」提出を予定しており、われわれの案とどちらが教育現場の抱える問題を解決していこうとしているかしっかり議論することを約せ。「今国会中に成立」と戯言を言わず、1、2年かけ国民を巻き込んだ議論を起こし、これからにふさわしい法をつくることを約せ。
 
学ぶ権利の保障
 格差問題深刻化のなか、この解決のためにも教基法に「学ぶ権利」が国民にあることを明記することが必要。政府案は強制的に押しつけるような項目羅列があるが、学ぶ権利や教育権が誰にあるか明記していない。さらに学ぶ権利は「すべて国民」でなく「何人も」に保障すべきだと思うがどうか。
 
国を愛する心について
 「国を愛する心」を自然な結果として持つことは当然だが、強制的に押し付けられてはならない。民主党案の前文は「国を愛する心を涵養」としている。水がしみこむように徐々に養い育てるということだ。政府案は子どもへの押しつけリストのようで、その最後に「わが国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」とある。国を愛する態度とは具体的にどういう態度か? 「心」がなくとも「態度」を示せばいいのか。「態度」のなかには「心」も含むのか?

宗教教育について
 現行教基法の、特定の宗教教育禁止規定が拡大解釈され、宗教心、倫理観の涵養が教育の場で忌避されてきたきらいがある。政府案はほとんど現行法のままで公明党との配慮なら党利党略で教育がゆがめられてはならない。

教育財政、高等教育、幼児期教育
 高等教育は政府案では大学に限っている理由は? また、高等教育の家計負担率は約6割と先進国中最高だ。国際人権A規約の高等教育無償化条項を、マダガスカル、ルワンダとともにいまだ留保中だ。これを解除し無償化へ向けた拡充のため今回の教基法の議論を活用すべきではないか?
 民主党案に盛り込んだ「幼児期の子どもにたいする無償教育の漸進的導入」をどう考えるのか。
 民主党案では教育振興計画で高等教育費確保・充実の目標を盛り込んだが、政府案にはこの観点がない。財政支援も含めた責任の覚悟は?
 民主党案の情報文化教育充実、建学の自由重視について総理の見解は?

小泉総理大臣
 平成12年の教育改革国民会議以来国民的議論を受けた。対案は歓迎する。政府は国会の議論を受け適切に対応する。
 (外国人への教育保障は)特段規定していないが、希望する外国人には日本人同様に保障していく。
 わが国を愛し発展を願う態度は心と一体として養われるものと考える。
 宗教的情操は多義的なので規定していない。
大学の役割は今後一層重要であり、教育と研究をともに行うこと、自治の尊重といった特性をふまえ、特に規定した。
教育無償化、機会均等確保は重要。高等教育は奨学金等充実で今後も適切に対応。国際人権規約は財源問題もあり留保とした。
幼児期の教育については負担軽減に努めてきた。無償については財源含め幅広い議論が必要だ。
公教育への公的支出の比率こそ低いが、在学者1人あたりの額は欧米に遜色ない。

小坂文部科学大臣も用意された答弁書を小泉総理とほぼ同様に繰り返す答弁にとどまった。

社民党・保坂展人議員の質疑と答弁の概要は次のとおり。
日本も批准した国連・子どもの権利条約の権利主体としての子ども、子どもの最善の利益が法案には見えない。
教育勅語の復活危惧の声がある。勅語と基本法、政府案の関係は?
密室の審議による文部科学委員会棚上げでの提出だ、どんな議論あったか公開を。
国旗・国歌法案の審議の際も教育現場で強制しないと答弁されたが、教員の大量処分を呼んでる。愛国心持ってるか教員、子どもを評価、評定し、「非国民」扱いが再来しない歯止めは?
国家の教育支配禁じる規定が正反対に変わり介入の根拠となり、国家の教育支配呼ぶ危険がある。
教員は全体の奉仕者、との規定が消えたのは?

小泉総理大臣
 教育を受ける権利を踏まえ、生涯学習社会としての理念に拠るものであり、法案は子どもの権利条約とも合致する。
 改正案は新しい時代に対応した教育理念確立のためのもので、教育勅語の理念の復活ではない。
 与党協議の経過は政府としては答える立場にない。
 わが国と郷土を愛するとともに、の規定は教育上の目的の規定であり、内心に立ち入るものではない。

小坂文部科学大臣
 教育への不当な支配の排除とは、一部勢力の介入の排除であり今後も重要。(政府案は)その上に、法に定める教育は不当な支配に服するものではないことを明確にした。
 教員に関する政府案の規定は、職務遂行への自覚と普段の資質向上のために規定したもの。全体の奉仕者、については私立学校も法の対象になることによる。

                                                以上

※追伸
なお本日13時より国会前座り込み行動を開始した。関東ブロックの仲間が雨の中、抗議の座り込み、シュプレヒコールを繰り返し、教育基本法「政府法案」反対の意思表示を行なった。挨拶に立った日教組山本副委員長は、「NHK、毎日新聞の世論調査をみても充分な論議が必要だと出ている。しかし改正が必要とする意見も多いく拮抗している。教育基本法を読み生かす運動を継続し、全国キャラバン、座り込み、国会傍聴行動を強化していこう」と参加者に訴えました。参加者の一部は本会議の傍聴を行なった。
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