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「全国護憲大会」

教基法改悪、国民投票法に反対  全国護憲大会に4,100人が参加

 安倍首相が「5年以内の改憲」を公言し、教育基本法改悪・国民投票法制定の動きが高まっている中「−憲法公布60年、平和・人権・民主主義の憲法理念の実現をめざす−第43回護憲大会が、11月3〜5日、大分県別府市で開催され、全国から4,100人が参加、鹿児島からはバスで2台80名(鹿教組からは10名)が参加した。
 集会では開会総会、「憲法60年と東アジアの平和」シンポジウム、分科会・閉会総会が行われ、大会アピールと「教育基本法改悪に反対する特別決議」を採択し、護憲運動の強化を確認した。
 シンポジウムでは、三宅晶子(千葉大教員)、大分芸術短大のケ(とう)助教授、日韓問題研究者の李(り)さんのパネリストが、中国・韓国の教育事情について述べ、東アジアの平和・民主主義・人権確立についての展望について討論がなされた。
 以下はシンポジウムの内容と分科会「教育と戦後補償」について掲載。


【シンポジウム】
〈教育の問題〉
 三宅:教育基本法改正の内容について、10条で謳われていた教育行政の独立が、改正案では教育行政そのものを変えてしまうということになる。また、教育の主権を国民でなく国家にするということだ。そして、平和の砦としての教育を変え、非国民や教員をあぶりだすという方向になっている。日本の教育は競争が激化し、学校は数値目標に縛られている。そのため、数字でしか人間を図れず、子どもたちは自己肯定感をもてずにいる。
 :「中国では90年代教育が激化した。その中で都市部と農村の格差が広がった。その解消のため、今は、「学校に行けない子どもをいかせる」希望プロジェクトが青年団によって行われ、沿岸地区に学校をつくる動きが出ている。
 :韓国では、組合が大きく寄与して民主化が進められていった。97年からIT教育を受け入れている。国防予算は30%を占めているが残りは教育費に当てられている。しかし、国家主義とナショナリズムを克服できていないのが問題で、国旗に敬礼できなかったとして入学できなかった高校生もいる。

〈愛国教育について〉
 :中国では、「国を愛する」といった抽象的な概念はない。「国を愛する」ということは中国共産党が創った国を愛するということになる。
 :朝鮮戦争以来、北朝鮮のものをすべて否定することから、民族主義が醸成されたが、80年代からの民主化によって客観的に「愛国心」を見直す気運が生まれた。その中で、「自分の国をどう作り替えるのか?」という視点で「自分たちの国に誇りを持つべき」とした発想が最近の愛国になっている。

〈暴力・セクハラについて〉
 :韓国の学校では先生から生徒への暴力は「愛のむち」としてよく行われてきた。しかし、90年代以降、教師の暴力をなくすことにとりくんできた。NGOで「暴力防止のキャンペーン」を実施し、暴力をふるった人が相手に謝罪をする日(10/20 )を設定してとりくんでいる。組合でも「子どもの教育をどう考えるのか」が議論されている。
 :セクハラや暴力は田舎の方が多い。自殺は中国ではない。「逆境でも生きていく」という家庭の教育があるから、命は絶たない。しかし、親の期待に応えられないという大学生や院生の自殺はある。
 三宅:学校は子どもたちにとって苦しい場所になっている。それは日々の態度も評価の対象になっているからだ。教員が競わされていることは子どもの閉塞感につながっていく。そういう中で、「先生何やってるんだ。学校何やってるんだ。教委〜。」という批判の声が流れとなって、国の介入を呼び込む動きになっている。学校の教育活動の中で大事なのは、子ども自身が参画していくことだ。

〈アジアへの理解をどう深めていくか?〉
 三宅:「子どもは教育を受ける権利をもっている」という法律そのものの転換がなされようとしている。この流れは、目の前のことで精一杯な保護者には見えない。自衛官が学校に入ってくる状況において、平和教育のあり方も現在の問題としてとらえて実践することが大事だ。
 :日本は軍事費大国になっている。「誰かがしかけてきたらどうするか」に軽々しくのらないことだ。
 :日本は歴史認識と歴史事実を区別して考えるべき。民主化とは友だちをつくっていくこと。安保とは、敵を友人化することだ。平和運動があって平和教育ができるというもの。
 :南京記念館は理念でできている。しかし、日本では平気で戦争責任を否定する人がいることを危惧している。良識派の意見が小さい。「反日教育は盛んに行われている」という報道は事実ではない。教科書でも日中戦争を背景とする記述は減っている。
 :韓国の歴史教科書は一つである。道徳もある。「正しい心を持つべき」という模範が示されている。65年の国交正常化の中で日本と韓国の関係が創られていった。独立記念館に中には、資料はないが人形を展示している。韓国では親日の視点はあるが、自国が自国民に対して加えた暴力について知らされていない。つまり「加害の認識」が必要で、共有化されるべきだと思っている。
 三宅:被害だけでなく他国への加害も当然必要だが、抵抗の歴史も教育の中であるべき。ドイツの教科書には抵抗が書かれている。抵抗の段階には「@同調しない、A拒否する、B命がけで守る、C政府そのものを倒す抵抗」だ。@ができていれば次の段階に行かなくていいのだということだ。
 憲法9条は東アジアに対する約束だった。私たちは、この状況にあって、「思考停止しないこと、あきらめないこと、こわがらないで行動することだ」と強く思っている。
 :私は2年2ヶ月軍隊に行った。そこでは「軍隊がいや」だと120名が自殺した。このことはあまり社会に知られていない。日本の市民社会は軍隊を受け入れるのか?戦後アジアの人はどう生きてきたか?民主化運動を自らの力でやってきたフィリピンなどにも学ぶべき。アジアの人は日本を見ている。9条を守ることはアジアと連帯していくことである。9条はアジアへの謝罪であり、不戦の誓いなのだ。
 :平和憲法を改正するのはもったいない。現実的にはいろいろあっても人類の理想である。

【分科会―教育と戦後補償―】
 「今の教育改革は学校をどう変えるか〜今後の課題」として西原博史(早稲田大学教授)と、「強制連行・遺骨問題を通して日本の歴史認識を考える」上杉聡(強制動員真相究明ネットワーク)の2本の提起が行われ、意見交換を行った。
 西原さんは、「教育基本法改正で問題は何を解決できるのか?」と問い、改正では「『個性尊重』という名の弱者切り捨てがすすむ」とした。そして国民を押さえ込むための「タガ」としての愛国心などの規範教育が必要となる。つまり、国民精神統一化にむけた国家プロジェクトが教育基本法の「改正」である。これに向かうには、「自分で考え自分で判断できる子どもを育てる」こと「一人ひとりの子どもを尊重する」という理念が必要だと述べた。
 上杉さんは、「物ではなく戦後ずっと解決されない問題として遺族の心の中に残っているのが遺骨の問題である」として、遺骨問題をめぐる98年以降の日韓の動き、05年からの日本政府のとりくみについて述べた。「日本の連合国の捕虜については敗戦の翌月すべての遺骨を引揚げた。そして韓国からも遺骨を返してもらっている。しかし、日本に強制連行されてきた朝鮮半島出身者についてはまったく手つかずにされてきた」と述べ、現在、仏教各派への調査依頼と、強制連行による犠牲者遺族の招請運動をすすめられているーとした。
 4月、神本議員は国会でこの問題をとりあげ、地方公共団体への調査徹底を約束させている。

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